ゴー宣DOJO

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切通理作
2014.5.30 00:58

PC遠隔操作事件は本当に解決したか

ゴー宣ネット道場の動画で高森さんとやっている『時事楽論』において、話題として取り上げたことのある「PC遠隔操作事件」で、冤罪を主張していた片山祐輔被告が真犯人だったことが分かりました。

 

しかしこの事件、本当に解決したと言えるのでしょうか。否、この事件が提示した問題が、本当に解決したと言えるのでしょうか。

 

僕が『時事楽論』の時に問題提起したのは、自分のパソコンが、自分にはまったく預かり知らないところで誰かに遠隔操作され脅迫などに使われた時、どうやってそれを証明できるのかということでした。

 

ネット社会の蔓延により、個人がそういう危機にさらされる可能性は、これからどんどん増えていくと思うからです。

 

実際、片山被告に行き着くまで、複数の遠隔操作された無実の人間が、警察による自白の強要に屈服し、やってもいない罪を認めてしまっていました。

 

今回、片山被告が保釈中にたまたま自ら真犯人であることが露見するような新たな行動を取り、そこを押さえられて本人も観念したため、誰の目からも彼の有罪が明らかになりました。

 

けれど、もしそれがなかったとしても、彼はあくまで「保釈」されたのであって、司法的には有罪のままにさせられていたことに変わりはなかったのではないでしょうか。

 

片山被告が真犯人であったとわかるやいなや、この事件において裁判の公正性を問う提言をしたジャーナリストが、ネットでバッシングを受けていました。

 

しかし、そうやって誰かをバッシングして喜ぶネットのヘビーユーザーたちは、自分のパソコンが誰かに遠隔操作された時、自分が何かの事件の真犯人にさせられてしまうという可能性が少しも払しょくされていないことに思い至らないのでしょうか。

 

もちろんこの問題は、ネットのヘビーユーザーにとってだけ関係のあるものではありません。パソコンや携帯を使い、ネットにつないでいる人間なら、誰でも逃れることの出来ない問題です。

 

この問題について、八木啓代さんという方が『PC遠隔操作事件:マスコミがあえて触れない「事件の真相」』というブログ記事を書かれていますが、非常に参考になりました。

 http://htn.to/PkxHwT

 

ここには、片山被告がなぜ真犯人であるのに無罪の徹底抗戦を貫いてこれたのかは、逆にいえば自分が真犯人であったため、警察や検察、そしてそれを追認するマスコミのずさんさが手に取るようにわかったためではないかと書かれています。

 

八木さんの精微な、「起きたこと」の検証は、それが真実であると納得させられるのに十分でした。

 

いまこの文章を読んでいる貴方、自分だけは安全圏に居て、この問題を語れると本気で信じていますか?

以上、僕もかつてこの問題をネット道場番組で採り上げた責任から、書いてみました。

http://www.nicovideo.jp/watch/1363407731
「誰も見たくない? 時事楽論」第3回『PC遠隔操作事件が示すもの』

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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